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軽井沢通信 vol.9 特集 自然と歴史に包まれた秋の軽井沢へ 麦わら帽子を探しに フライフィッシング 絶品! 愛されパン 軽井沢彫 軽井沢の食材 渓流魚

麦藁帽子を探しに 〜霧積温泉〜

「母さん、僕のあの帽子どうしたでせうね。 ええ、夏碓氷から霧積へ行く道で渓谷へ落としたあの麦わら帽子ですよ」。
この西條八十の詩、というよりもそれをモチーフにした森村誠一の小説「人間の証明」で一躍有名になった霧積温泉。松田優作主演の同名の映画でも登場しましたね。現在は秘湯と呼ばれていますが、明治の初めごろは軽井沢よりも栄えていたという霧積温泉をご紹介します。

霧積温泉

霧積温泉は明治初期、旅館が40軒以上もあるリゾート地でした。伊藤博文や勝海舟、与謝野晶子など明治の著名人、文化人が多数訪れたそうです。しかし1893(明治26)年に信越本線・横川-軽井沢間が開通して軽井沢がリゾート地として整備され、その座を奪われます。さらに1904(明治34)年には台風の大雨による土砂災害で壊滅的な打撃を受け、旅館は1軒が残るのみとなりました。

昔は馬車や人力車でやってきたそうですが、現在、車で行くのであれば、東京方面からは上信越自動車道・松井田妙義ICを降りて横川から国道18号(旧道)を、軽井沢からは旧道で碓氷峠を横川方面へ下り、霧積川に沿って山を登っていきます。

今回は横川から中山道坂本宿を抜けるコースを進んでみます。坂本宿は江戸から数えて17番目の宿場で、碓氷の関所と碓氷峠の間にあるため、ここで休む人も多く、参勤交代の大名もよく利用したそうです。現在は多くの建物が新しくなってしまっていますが、所々に残る宿屋の建物や水路を配した広くて真っ直ぐな道路が往時を思わせます。

坂本宿
坂本宿

その坂本宿を抜けると玉屋ドライブインのある交差点を右折。看板が出ていますのでお間違えのないように。霧積川に沿ってさかのぼり、しばらく進むと霧積ダムがあります。

このダムは1976(昭和51)年にできたもので、堤高は59mあり、放水されているときの眺めは圧巻です。さて、ここから先は道の幅が狭く、車がすれ違えないので運転には注意が必要です。また、携帯電話も圏外になります。

霧積ダムから約7km、つづら折の山道を登っていきます。途中、小さな砂防ダムで猿が遊んでいました。霧積温泉に近づいたところで、右側に滝が見えてきます。

金洞の滝といわれるこの滝は落差10mほどで、道路から近いので迫力があります。駐車スペースもありますので、車を降りてじっくりと見ていくとよいでしょう。

ダムによってできた霧積湖
ダムによってできた霧積湖
霧積ダム
霧積ダム
砂防ダムで遊ぶ猿
砂防ダムで遊ぶ猿
金洞の滝
金洞の滝
現在は閉館となっているきりづみ館
現在は閉館となっているきりづみ館
きりづみ館にある西條八十の詩の立て札
きりづみ館にある西條八十の詩の立て札
赤い屋根の建物が見えてきた
赤い屋根の建物が見えてきた猿
金湯館
金湯館

金洞の滝から300mほどで、きりづみ館に到着です。
きりづみ館は1971(昭和46)年にできた旅館で、残念ながら今年4月に閉館となりました。
車で進めるのはここまでです。きりづみ館横の無料駐車場に車を置いて、霧積温泉唯一の旅館、金湯館へと山を登ります。

木々が繁り、昼なお暗い山道を20分ほど歩くと赤い屋根の建物が見えてきました。
この金湯館は1883(明治16)年に建てられ、翌年に開業しました。以来130年にわたって、当地を訪れる人をもてなしています。

金湯館は山小屋を思わせる入り口、歴史を感じさせる建物で何かほっとした気分になります。
出迎えてくれた3代目女将の佐藤みどりさんによると「『人間の証明』のころは今の3倍くらいの人が来ていた」とか。伊藤博文が泊まった部屋も保存されていて、130年前の建物を少しずつ修繕しながら今まで営業を続けてきたそうです。

山登りでかいた汗を流そうと温泉へ。金湯館は霧積温泉の湯元で、お風呂は源泉かけ流し。風呂場のドアを開けるとほんのりと硫黄のにおいがします。
泉質はカルシウム-硫酸塩泉、39度と温度が低めで、ゆっくりとお湯を楽しむことができます。一緒にお風呂に入った初老の男性は毎年何回もここを訪れるのだとか。

お風呂を上がって、屋外の休憩スペースにいると、湧き水を引いているのでしょうか、前にある洗面所の水が出しっぱなしになっています。持っていたペットボトルにその水を汲んで飲み干すとこれまで飲んだことがないくらいの美味しさでした。

夜の静かさと星の美しさもまた格別です。携帯も通じず、周りには何もない。そんな環境の中でゆったりとするのもいいものですね。1泊とは言わず、2泊、3泊すれば、もっとこの場所の良さがわかるかもしれません。

水車
水車
ぬるめのお湯が気持ちいい
ぬるめのお湯が気持ちいい
木々の緑が美しい
木々の緑が美しい

今回は森が緑でいっぱいの時期に来ましたが、冬もまた素晴らしそうです。雪と湧き水が凍った氷がとても美しいのだとか。冬場は山道が危ないので、麓の玉屋ドライブインまで送迎してくれます。

また、周辺には剣ヶ峰、鼻曲山といった比較的手軽にハイキングが楽しめるところもあります。軽井沢からも2時間半ほどで歩いてくることができますので、ぜひ一度お試しください。昔の賑わいが想像できないくらいの秘湯、霧積温泉。この温泉と旅館を長く守っていってほしいと思いました。

【霧積温泉 金湯館】

群馬県安中市松井田町坂本1928 TEL.027-395-3851
http://www32.ocn.ne.jp/~kirizumikintokan/

※夏期、宿泊の場合はきりづみ館、あるいはJR横川駅まで送迎してくれますので、お問い合わせください。
※周辺にはクマ、イノシシ、サルなどを野生生物がいますので、クマ鈴などを持参したほうがよいでしょう。
また、日が暮れると真っ暗になりますので念のため、懐中電灯もあったほうが安心です。

霧積温泉 金湯館

フライフィッシング 〜軽井沢の清澄な森の中で渓流釣りを楽しむ〜

軽井沢で「フライフィッシング」に初挑戦しました。「フライフィッシング」とはその名の通り「虫を餌にした釣り」。生きた虫でなく毛針のフライ(虫に似せて作った疑似餌)を使います。

ちなみに私はド初心者なので数々の不安が…。「英国貴族のレジャーと言われているだけに敷居が高いのでは…」「魚種や釣り方に強いこだわりを持った人ばかりなのでは…」。しかしそんな心配は無用。公園が隣接する近場の川で、釣れても釣れなくても、自然に中に身を置き、気楽にのんびりとその時間を楽しめたらもうりっぱなフライフィッシャーです。

今回行ったのは、釣りで有名な「湯川」。国道18号軽井沢バイパスの鳥井原東交差点付近から高架橋にかけての「湯川ふるさと公園」に沿った場所で、川沿いには釣り人が歩くことによってできたという道があり、軽井沢の清々しい自然に包まれながらフィッシングが楽しめます。

フライフィッシングを教えてくれたのは、湯川や佐久市周辺の川でよく釣りをするという佐久市在住の内田洋司さん。私は「渓流日釣証」(1260円)を購入しましたが、さすがの内田さんは年間パスポート「渓流年券」(6300円)を持っています(鮎釣りは別の入漁証が必要です)。

フライをつける
フライをつける
入漁証を買って釣ります
入漁証を買って釣ります
いろいろな昆虫に模したフライ
いろいろな昆虫に模したフライ

必要な道具は釣竿、ライン、ウェーダー(防水ズボン)、フライ、タモ(釣った魚を入れる網)など。事前に内田さんによるキャスティング(フライを狙ったところに落とすための釣竿の投げ方)の指導を受けたのですが、実際にやってみると狙った場所にフライを落とせなかったり、ラインを絡めてしまったり、上手くいきません。魚がいそうなポイントを見つけ、どこに立ち、どこにフライを落とすかがフライフィッシングの重要なテクニックなのです。

季節天候によってフライを変えるのも重要で、生息する水棲昆虫の状況を確認し、魚が食べていると思われる昆虫に似たフライを選ぶことが釣果につながるという、なんとも高度な遊び。魚との駆け引き勝負ですね。

内田さんによると今回挑戦したドライフィッシング(フライを水面に浮かせる釣り方)のほかに、ウェットフィッシング(フライを水中に沈める釣り方)もあるそうです。いずれにせよ、奥深い世界だなあと感動しました。

今回は残念ながら(当然?)釣果なしにて終了しましたが、清らかな水流に立ち、緑に包まれ、マイナスイオンをたっぷり浴びて、涼を感じる爽快なひとときを過ごすことができました。内田さんによる釣りの極意とは「無になる」こと。無心になって楽しめるものがあるなんて、素晴らしいことです。

フライフィッシングは通常釣ったら逃がすのがマナーであり、純粋に釣りをレジャーとして楽しむのだそうです。釣って食べたいということしか頭にない私はまだまだ修行が足りないということでしょう。

(文:宮沢三和)

【佐久漁業協同組合】

http://www.geocities.jp/sakugyokyou/

絶品! 愛されパン in 軽井沢

軽井沢の自然に育まれ、
愛情をたっぷり注がれたパンたち

パンの香り、パンの表情、いろんなパンを眺めていると“ほわっ”と幸せな気持ちになります。軽井沢にはオシャレでおいしいパン屋さんがたくさん。その中から、こだわりを感じるお気に入りの2店を紹介。どちらもついついフラッと立ち寄りたくなる“コニクイ”人気のパン屋さんです。別荘客やリピーターだけでなく、訪れるたくさんの人たちから愛されています。人気店ゆえ、のんびりしてると欲しいパンは売り切れますのでご注意を!

「銀亭」(しろがねてい)中軽井沢店~自社農場を持ち、大地の恵みにこだわった安心なパンを提供~

しなの鉄道中軽井沢駅から徒歩10分、まあるい看板が目印の「銀亭 中軽井沢店」。北軽井沢にある自社農場で作られている小麦粉や野菜、名古屋コーチンの卵などこだわりの食材を使用。美味しいというだけなく、安心、安全なパン作りにこだわったパン屋さんです。天井が高く、木のぬくもりあふれる店内には個性豊かなパンたちがいっぱい…。

購入したパンは隣接する「カフェ銀亭」でドリンクと一緒にゆっくり食べられます。夏は涼しげなアイスカフェオレといかが。

【農工房 銀亭 中軽井沢店】

住所:北佐久郡軽井沢町長倉2955-6 定休日:水曜日(8月無休)
営業時間 7:30~19:00 TEL:0267-44-3203

【カフェ 銀亭】

営業時間:7:30~15:30
8/1~8/31まで「野菜バイキング」開催。

「haluta(ハルタ) 軽井沢店」~変わらない、をコンセプトに、いつもある安心を~

オープン3年目を迎えた「haluta 軽井沢店」は、中軽井沢駅から歩いてすぐのパン屋さん。「食べた人を笑顔にできるようなパンであってほしい」と、パンたちに毎日愛情たっぷりに語りかけ、無添加で安心なパン作りをしています。来店した人の食べたいパンがいつでもちゃんと提供できるように、あえて変わらないことを大切にしているそうです。

パンは棚から自分で取らず、ガラスケース越しにスタッフが取ってくれます。買ったパンはそのまま店内で食べてもOK。食事パン、ワインに合うパン、スイーツまでバラエティーに富んだ魅力的なパンがたくさん。ハルタさんのラインナップは、コロンとまるっこいパンが多い印象。可愛らしくて、大好きです。

店の一角には北欧風の雑貨や輸入衣料、Ittalaの食器などが並べられています。直接買い付けに行っているそうなので、ここにしかない商品が見つかるかも。すべてにおいてセンスを感じるパン屋さんです。

(文:宮沢三和)

【haluta 軽井沢店】

住所:軽井沢町中軽井沢3018-3 定休日:火曜日(7/18~8/27日まで無休)
営業時間 7:00~18:00 TEL:0267-31-0841

軽井沢彫 〜軽井沢の歴史とともに〜

宿場町から外国人の避暑地へ。そんな軽井沢の歴史が生んだ和洋折衷文化のひとつが軽井沢彫です。今回は、軽井沢彫家具組合の組合長を務める大坂屋家具店でお話を聞いてきました。

明治20年頃に軽井沢に外国人の別荘がたくさん建つようになり、家具の需要も増えてきます。当時の外国人は彫刻の施された家具を好んだそうで、日本でも有数の華麗な彫刻技術を持つ日光彫の職人たちを招き、家具を作り、販売したのが、軽井沢彫の始まりです。

日光彫は、三代将軍徳川家光の時代に再建された日光東照宮の木彫り細工の伝統を受け継いだ彫り物で、牡丹や梅などの草花の文様が深彫りされているのが特長です。その日光彫に影響を与えたといわれるのが、中世仏具の流れをくむ鎌倉彫。こちらは日光彫に比べて彫りが浅く女性的といわれています。

軽井沢彫家具のモチーフには桜や葡萄が多く見られます。最初は日光彫の影響で牡丹や菊の絵柄が多かったのですが、桜が外国人に喜ばれたため、桜の絵柄が増えていったそうです。

チェスト
チェスト
ライディング・デスク
ライディング・デスク
桜の文様が外国人に好まれた
桜の文様が外国人に好まれた
葡萄もよく用いられる絵柄
葡萄もよく用いられる絵柄
ドレッサー
ドレッサー
長椅子
長椅子
手軽に入手できる小物類も豊富
手軽に入手できる小物類も豊富

軽井沢彫家具の作成工程は大きく二つに分けられます。木地師と呼ばれる職人が、トチやカツラといった木材を切り、寸法を合わせて仮組みまで行います。その後、彫刻師がいったん家具をばらして、彫刻を彫り、もう一度くみ上げて塗装をして完成です。木地、彫刻、それぞれ一人の職人が受け持つことが多く、注文から納品まで、3ヶ月から5ヶ月かかります。

 ニカワなどの接着剤を使わずに分解できる仕様なのも、軽井沢彫家具の特長です。それは外国人が任期を終えて母国に帰るときに、分解して船便で送りやすくするためだったそうです。しかし、現在では、そういう事例も少なくなってきました。木の伸縮などで調整が煩雑になるため、製品によっては接着されているものもあります。

およそ100年の歴史を持ち、長野県伝統工芸品にも指定されている軽井沢彫。現在、軽井沢彫家具組合に加盟しているのは5社で、「職人さんは5社で27名います。30代の人が多く、後継者も育ちつつあります」(大坂屋家具店・土屋さん)とのことです。組合員のお店では修理も請け負っていて、修理をすることで二代、三代と受け継がれてきたものも数多いといいます。

大きな家具は職人さんが一つひとつ丁寧に作り上げるものですから高価ですが(価格は店舗や下記のウェブサイトなどでご確認ください)、手軽に入手できる手鏡や小物入れなどもありますから、ぜひ、お店で手にとって、その歴史と技術の素晴らしさを感じ取ってください。

参考文献:「軽井沢彫家具」(発行:軽井沢町商工会)2,000円

[軽井沢彫家具組合 組合員]

【一彫堂】

軽井沢町軽井沢775(旧軽井沢銀座)
TEL.0267-42-2557
http://www.icchodou.com/

【内堀木工】

軽井沢町新軽井沢295(矢ケ崎公園そば)
TEL.0267-42-4500

【大坂屋家具店】

軽井沢町軽井沢629(旧軽井沢銀座)
TEL.0267-42-2550
http://www.osakaya-f.co.jp/

【清水家具店】

軽井沢町軽井沢150(旧軽井沢ロータリーそば)
TEL.0267-42-7128

【軽井沢彫シバザキ】

軽井沢町軽井沢751-2(旧軽井沢銀座)
TEL.0267-42-2468
http://www.sibazaki.com/

軽井沢の食材 渓流魚

夏を感じる食材といえば、アユなどの渓流魚を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。軽井沢の湯川は、上の記事にもあるように、渓流釣りのメッカ。また佐久地方は淡水魚の養殖が盛んで、コイやニジマスなどが千曲川の水を使って育てられていて、スーパーなどでも地元の養殖魚を手に入れることができます。

今回はニジマスです。ニジマスは1年目の20cmほどのものは塩焼きに、2〜3年目で30〜40cmほどのものは三枚におろしてムニエルやバター焼きに向いています。塩焼きはヒレに多めに塩をつけて焼くだけ。はらわたを取るなどの処理は特にいりません。白身のさっぱりとした味わいは夏のさわやかさを感じさせてくれます。

※渓流魚はいずれも寄生虫がいることがあるので生食はおすすめしません。

ニジマス
ニジマス
ニジマスの塩焼き
ニジマスの塩焼き