蓼科高原、その魅力の源は、何と言っても“八ケ岳”。
だが残念なことに、近くにいると大きすぎてその全容を見ることができない。
南北約30kmに及ぶ八ケ岳連峰の絶景が望める、入笠山山頂へ登ってみた。
ゴンドラ×徒歩で行くお手軽絶景ハイキングをどうぞ!

なぜ数ある八ケ岳のビュースポットから入笠山を選んだのか?その理由は単純明快、〝楽〟だからである。入笠山は、南アルプスの最北端にある独立峰で、山頂には360°の大展望が広がり、八ヶ岳連峰の端から端まで望むことができる。標高は、2,000mをやや下回る1,995m。決して低い山ではないが、富士見パノラマリゾートのゴンドラリフトで標高差730mを一気にかせぎ、ゴンドラステーションから1時間ほど歩くだけで山頂に立つことができる。
例えば、晴天の朝、サンドイッチを持って入笠山へ登り、壮大なマウンテンビューに抱かれて朝食を楽しんだり、別荘へ向かう際にふらっと立ち寄ったり、そんな超お手軽登山も可能なのだ。では、手軽に絶景が味わえる入笠山ハイキングをご紹介しよう。

ゴンドラを降りると別天地
ゴンドラリフトの運行開始時間の九時半に山麓駅へ到着。
入笠山登山は、富士見パノラマリゾート・ゴンドラリフトの「山麓」駅からスタートする。ゴンドラ乗車後間もなくすると東側正面の窓に八ケ岳が現れ、ゴンドラの上昇とともにその全容が見えてくる。これはスゴイ!裾野までくっきりだ。山頂駅までの約十分間、ずっと窓にかぶりついてしまった。
ゴンドラを降り、森の中を10分ほど歩いて行くと視界が開け、眼下に入笠湿原が広がる。初夏には、小さな白い花を鈴のように吊り下げているスズランや、赤い花弁がひと際鮮やかなクリンソウが咲き誇る。こじんまりとした湿原だが、多種多彩な山野草がいたるところに咲き目が飽きない。

シラカバ林やズミの群生を眺めながら遊歩道を進み、最初の山小屋・山彦荘前の広場へ。森の小径をしばらく歩いて行くと二軒目の山小屋・マナスル山荘の傍らに出る。入笠山登山口は、マナスル山荘のすぐ目の前にあり、山頂までの標高差は約200m。道標には歩いて30分と書いてある。進めば進むほど道が険しくなり、登山らしくなってきた。空気も薄いようで、早足で歩くと少しばかり息苦しくなる。

圧倒的な頂上の大パノラマ
ダケカンバ林を抜け、なだらかなガレ場を登り終えると、そこは頂上。パァッ!と視界が広がり、正面に甲斐駒ヶ岳が迫ってくる。視線を阻むもののない360°の大展望。西方向に木曽駒ヶ岳や御岳山、北方向に穂高岳や白馬岳、南方向に富士山や鳳凰岳などの南アルプスが一望のもとに見渡せる。そしてお目当ての八ヶ岳は、南端の編笠山から北端の蓼科山まで包み隠さず見ることができる。美しさもさることながら、裾野の広さに圧倒された。あの雄大な森の中で星の数ほどの動植物が生命を育んでいるのだから、まさに八ヶ岳は神が宿る恵みの山だ。
また頂上はとても広く、テニスコート3面分はありそうだ。取材当日は天候に恵まれていたため、多くのハイカーで賑わっていたがまだまだ余裕。お弁当を拡げるグループやパーコレーターでコーヒーを沸かす人など、思い思いのスタイルで〝山頂ライフ〟を満喫していた。
それにしても、言葉を失うほど素晴らしい超絶景を、わずか1時間足らずの登山で味わえるとは驚いた。入笠山は、思い立ったらすぐ来られる点が魅力。頂上の展望はもちろん、湿原の花々も素晴らしい。
労することなく大展望と高原の自然を満喫できる入笠山ハイキングは、おすすめ度特大!普段、身近で眺めている八ヶ岳の新たな魅力が発見できるはずです。晴れた日には、ぜひ、入笠山へ!!