Vol.18
大人が愉しむ木のおもちゃ
冬が近づき寒くなってくると、外に出るのが億劫になりませんか。そんな時は、インドアで楽しめるミュージアムめぐりはいかがでしょう。もうすぐクリスマス、クリスマスといえばサンタ、サンタといえばおもちゃのプレゼント!ということで『エルツおもちゃ博物館・軽井沢』へ出かけてみました。
『エルツおもちゃ博物館・軽井沢』は、主にドイツ東部に位置するエルツ地方に伝わる木工工芸おもちゃを展示する博物館。ドイツ人の伝統文化に対する誇りとマイスター(職人)の精緻な技が、日本人の感性に通じることから、ドイツ・ザクセン州ザイフェン村立『エルツ地方のおもちゃ博物館』の姉妹館として1998年4月に開設された。
かつてエルツ地方は銀・スズなどの地下資源が豊かで、15世紀半ばより鉱山として栄えてきたが、やがて資源が枯渇し衰退。19世紀に入り鉱山が閉鎖すると、鉱夫達は身近な森林資源を利用して木工おもちゃの制作に活路を見いだした。木を削って、細かなパーツを作り、色を塗り、組み立てる製造工程は、全て手作業。機械で作る大量生産では表現できない温もりのある造形が作り出されている。
「鉱夫たちのパレード」や「天使と鉱夫」のペア人形など、かつて鉱山の街だったことを伝える木工おもちゃをはじめ、ろうそくの熱の上昇気流でプロペラを回す「クリスマスピラミッド」や、口からお香の煙を出す「パイプ人形」など、エルツ地方独特の遊び心豊かな木工芸品が作られ、『エルツおもちゃ博物館・軽井沢』に展示されている。
「パイプ人形」は、郵便配達員、猟師、警官、パン屋さんなど、様々な職業の人形があり、医師の人形は、内科医、眼科医、獣医、薬剤師、歯科医などなどバリエーション豊か。
サンタクロースの「パイプ人形」は、なぜか片手に木の枝を持っている。ドイツのサンタクロースは、いい子だけにおもちゃやお菓子をプレゼントし、悪い子には木の枝でおしおきするらしい。誰にでも優しい日本やアメリカのサンタクロースとは違って厳格だ。
くるみ割り人形も盛んに作られ、鮮やかな配色の王様や役人の人形がたくさん。「ああしろこうしろとうるさく命令する王様の口に固いくるみを噛ませて閉じてやろう」という庶民のささやかな反骨心が込められているらしい。
またノアの箱船に乗せるつがいの動物などの木工おもちゃもあり、精緻でリアルな造形に思わず目を見張る。ロクロを使って木材を削り出し、一体一体、形を揃えて制作する工程が紹介されており、細部に至る手の込んだ職人技に驚くばかり。
重さによって税金の額が変わる時代には、小さくて軽い木のおもちゃが作られ、マッチ箱に入るほど小さな人形も生まれた。
『エルツおもちゃ博物館・軽井沢』に展示されている木のおもちゃは “おもちゃ”と呼ぶのもはばかられるほど繊細かつ丁寧な仕上り。冬の長い夜、窓辺を飾るクリスマスの木工おもちゃは、日本の雛人形や五月人形などの伝統的工芸品に共通するものを感じさせる。
『エルツおもちゃ博物館・軽井沢』では、2020年の1月13日まで秋冬展「木工おもちゃのクリスマス」が開催され、赤と緑に包まれた展示館内と伝統が息づく木工おもちゃが工房の特徴と共に紹介されている。
軽井沢で、ドイツ・エルツ地方の伝統的なクリスマスに想いを馳せてみませんか。
博物館に併設された木のおもちゃのお店では、ろうそくの熱でプロペラを回す「クリスマスピラミッド」をはじめ「パイプ人形」や「くるみ割り人形」など、エルツ地方の伝統を受け継ぐ工房の作品が販売されている。
お問い合せ先
エルツおもちゃ博物館・軽井沢
料金/大人700円、中高生450円、小学生350円、小学生未満無料
※2020年3月1日より料金変更予定
休館日/毎週火曜日、展示入替期間、冬季(1月中旬~ 2月末)
GW 期間中および7月~9月は無休
12月・1月の休館日はお問合せください。
〒389-0111 長野県北佐久郡軽井沢町長倉193(塩沢)
TEL.0267-48-3340
URL http://museen.org/erz/