軽井沢エリアの情報は数あれど、
何となくどれも似ていて新鮮味がないような…。
そんな印象をお持ちの皆様へ、ちょっとレアなレポートをお届けします。
紹介スポットは、軽井沢を拠点に“見る・味わう・楽しむ”をテーマに、
佐久・小諸・追分・草津方面など広範囲からセレクト。
地域に根ざしたおすすめスポットを紹介します。
Vol.11
秋景、軽井沢。
秋も深まり紅葉シーズンを迎えた軽井沢。多種多彩な落葉樹が森を鮮やかに染め上げている。
四季の彩りと共に長い年月を歩んできた伝統ある別荘地・軽井沢でしか出逢えない趣深い秋景をお届けします。
昼と夜の寒暖差が大きくなり空気がピンッと張り詰めてくると軽井沢の紅葉もいよいよピーク。碓氷軽井沢インターを出て新和美峠を越えプリンス通りに入ると、紅く染まったモミジの街路樹が出迎えてくれる。
紅葉に誘われるように軽井沢本通りを旧軽井沢へ向かい、[諏訪神社]近隣のパーキングに車を停め周りを見渡すと、紅、黄、橙、色とりどりに染まった森が広がっている。
アメリカ生まれの建築家W・M・ヴォーリズが手掛けた[旧軽井沢集会場]や[ユニオンチャーチ]などの西洋建築様式の建物は、鮮やかな紅葉に包まれ深みのある風情を醸し出している。
オーディトリアム通りから万平通り、幸福の谷へと、落葉をサクサク踏みしめながら森の小径を歩いて行く。頭上には、色づいたカエデやモミジ、コナラ、カツラなどが透過光で輝き、とても鮮やか。樹々の彩りと木洩れ陽、そして苔むした石垣が織りなす情景は、秋の旧軽井沢ならでは。
お気持ちの道から横道に入り木の塀の小径を進んでいくと、「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの」の詩句で知られる詩人[室生犀星旧居]の前に出る。昭和6年に建てられたという旧居は、障子、畳、縁側のある和建築で、苔むした庭にしっとりと佇んでいる。西洋建築様式の別荘が多い軽井沢ではむしろ新鮮。犀星は亡くなる前年の昭和36年まで毎夏をここで過ごし、堀辰雄、津村信夫、立原道造、川端康成、志賀直哉など多くの作家が訪れ交遊を深めたという。
ショー通りや水車の道など旧軽銀座に近い散歩道は、 [ショー記念礼拝堂]をはじめ[聖パウロカトリック教会]など、宣教師に見いだされ発展してきた軽井沢の軌跡を物語る観光名所が多く、平日でも観光客で賑わっている。教会の前でブライダル写真を撮影していた海外からのカップルも見掛けた。
そして、軽井沢を代表する紅葉名所である雲場池へ向かうと湖畔のモミジが深紅に染まり、鏡のような湖面に映しだされた紅葉と青空のコントラストが実に鮮やか。雲場池の周囲には、この季節にしか撮れない絶景を写真に収めようと、一眼レフやスマホを手に夢中で撮影する観光客が訪れ途切れることがない。
さて、ヴォーリズ建築の[旧軽井沢集会場]からスタートした本日の紅葉散歩。散歩の締めくくりもヴォーリズ建築と紅葉を絡めた写真が撮れる場所にしようと、[旧朝吹山荘]が移築された塩沢湖を訪ねてみた。
夕刻近かったせいもあるが、湖畔は人影もまばらで静寂の世界。錦繍の森に包まれた [旧朝吹山荘]を映し出す塩沢湖は、まるで絵画のような美しさ。夕陽を浴びて黄金色に輝く森の向こうに、浅間山が控えめに顔を出していた。
軽井沢の秋は、国内初の別荘地として歩んできた長い歴史と同じく、深く濃い。