WEBマガジン 季刊|軽井沢

軽井沢エリアの情報は数あれど、
何となくどれも似ていて新鮮味がないような…。
そんな印象をお持ちの皆様へ、ちょっとレアなレポートをお届けします。

紹介スポットは、軽井沢を拠点に“見る・味わう・楽しむ”をテーマに、
佐久・小諸・追分・草津方面など広範囲からセレクト。
地域に根ざしたおすすめスポットを紹介します。

Vol.5

昭和レトロな軽井沢大衆食堂

月刊軽井沢・バックナンバー 

 軽井沢の飲食店といえば、別荘族御用達の高級フレンチやイタリアン、お洒落な森のカフェをイメージしがちだが、地元人が普通に通っている飲食店にも注目したい。

 リゾート客向きのレストランのような派手さが無く軽井沢の情報誌などで紹介されることは少ないものの、地元の常連客に長年愛されてきた飲食店には、有名店にない深い味わいがある。そこで今号では、昭和の昔から軽井沢町民が通い詰めているいぶし銀の大衆食堂をご紹介しよう。

 まずはこちら、軽井沢町役場のすぐ隣にある『丸屋食堂』さん。国道18号線沿いにあるこの建物を見掛けた方も多いかと思うが、実際にお店に入ったことのある方は少ないのでは?

 建物のひなびた感がなんとも微妙で、営業しているのかどうか分からないほど。つい素通りしてしまいそうだが、入口に暖簾が出ている昼時はちゃんと営業している。

 建物の見た目どおり『丸屋食堂』さんの創業は昭和38年と古く、半世紀以上の歴史を持つ。店内は意外と広く、昔懐かしいビニール生地の椅子にパイプ脚のテーブルがいくつも並べられ、片隅には動くかどうか分からないジュークボックスが置かれている。

 いつのものか分からない古いポスターが貼られたままで、ここだけ昭和のまま時間が止まっているよう。場所がら、お客さんは軽井沢町役場の職員が多いという。

 メニューを見ると、な、なんと!ラーメン350円、カレーライス450円、かつ定食550円…。激安特価のオンパレードで価格もリアル昭和だ。

 思わず350円ラーメンを注文したくなったが、初入店の今回はメニューの札の色が他とは違う“ソースかつ定食”をいただくことにした。わざわざ差別化している点から、『丸屋食堂』さんおすすめメニューとみた。

 『丸屋食堂』さんの“ソースかつ”は、特製のソースにとんかつをくぐらせたもので、甘過ぎず辛過ぎないまろやかなソースが衣にほどよく染み丁寧な深い味。サクッモチッとした衣の食感と肉の旨味のコンビネーションが素晴らしい。

 この“ソースかつ定食”、わずか600円で食べられるとは驚きである。『丸屋食堂』さんが50年にわたり軽井沢町民に愛されてきたのも頷ける。隣席で“かつ丼”を頬ばっているお客さんも、量・質共に価格を大きく上回っていると大満足だ。

 さて次に紹介するのは、しなの鉄道「中軽井沢」駅前にある『はち巻』さん。正午前後の時間は連日満員御礼。店内のカウンター席はお客さんで溢れかえり、13時近くになってようやく空いた。

 お客さんの多くが“ラーメン”を食べているので人気メニューかと思いきや、壁の品書きに“ラーメン”がない!

 「すみません、品書きに無いんですけど…ラーメンってあるんですか?」とカウンター越しのマスターに訊くと、「あるよ」と普通の返答。

 「品書きはね、店開いた時から変えてないんだよ、これ見て頼むお客さん少ないから。うちはお客さんに食べたいものを言ってもらって作る感じ。できないものはできないっていうけど」とマスター。なんと『はち巻』さんでは裏メニューがスタンダードになっているのだ。

 何を頼もうかと思案していたら、「いやいや初めてのお客さんは例外だよ」と笑うマスター。いやはやちょっとがっかり。ということで、厨房から漂ってくる芳ばしい香りに惹かれ、今回は“エビフライ定食”を頼んでみた。

 テーブルに出されたエビフライは、てんこ盛りのサラダの上にタワーのように盛り付けられたビッグサイズ。サイドメニューにとろろ芋まで付いている。

 定食にはいつもとろろ芋が付いているのかとマスターに訊くと、「その日その時の気分で何か付けている」と笑う。

 サクサクの衣に包まれたエビはプリプリで濃厚。サラダにはマヨネーズにパウダー状ドレッシングが加えられ程よくスパイシー。お味噌汁の具もたっぷり。『はち巻』さんの定食は、価格も、量も、味も、満足度特大だ。

 そして隣席の方が食べているラーメンを見てびっくり、チャーシューがどんぶり全体に敷き詰められ麺が見えない。聞けばこのチャーシュー、自家製でかなりブ厚い。

 これで500円とは驚愕プライス!人気が出ないわけがない。裏メニューがたのめるようになったら、このラーメンを真っ先に食べたいものだ。

 軽井沢では、お洒落なレストランが脚光を浴びているが、昭和レトロな大衆食堂も現役バリバリで地元の常連客の根強い支持を集めている。

 時には、観光客が足を踏み入れない素顔の軽井沢を味わってみてはいかがだろう。気がついたら常連客になっているかもしれませんよ。

お問い合せ先

丸屋食堂

住所:長野県北佐久郡軽井沢町長倉2385-1 電話:0267-45-6100

お食事処はち巻

住所:長野県北佐久郡軽井沢町長倉3027-7 電話:0267-45-4395

丸屋食堂

お食事処はち巻