軽井沢エリアの情報は数あれど、
何となくどれも似ていて新鮮味がないような…。
そんな印象をお持ちの皆様へ、ちょっとレアなレポートをお届けします。
紹介スポットは、軽井沢を拠点に“見る・味わう・楽しむ”をテーマに、佐久・小諸・追分・草津方面など広範囲からセレクト。
地域に根ざしたおすすめスポットを紹介します。
Vol.2
ヨーロッパを彷彿とさせる“御影用水・温水路”
西洋人に避暑地として見いだされた軽井沢には、ヨーロッパを彷彿とさせる風景が点在している。その多くが教会やホテルなどの建築物を絡めたものだが、追分にある“御影用水・温水路”は、風景そのものがヨーロッパ的だと評判だ。幅広くゆったりと流れる御影用水の川辺には、ヨーロッパの運河沿いのような雰囲気が漂っている。
御影用水沿いの小径は近隣の別荘オーナーたちの憩いの場となり、休日になると散歩やジョギングを楽しむ人たちが行き交っている。萌える若葉に包まれる新緑シーズンは、清々しさも格別。古き良き別荘文化を継承する旧軽井沢の西欧風とは異なる、明るく開放的な軽井沢のヨーロッパを紹介しよう。

御影用水は、浅間山麓の千ヶ滝と白糸の滝の水を小諸市御影新田へ引くために開削された農業用水で、中山道の沓掛宿〜追分宿〜小田井宿〜岩村田宿〜塩名田宿あたりまで旧街道に沿うように流れている。
御影用水の原点はとても古く、360年以上前の1650年に遡る。現在の温水路は、用水の水温を上げるために昭和30年から40年代にかけて行われた改修工事で新設されたものだ。

御影用水の水源は浅間山麓の湧水なので、水温がとても低い。21㎞におよぶ長い水路を流れて行っても水温はさほど上がらず、稲の生長を妨げていた。そこで太陽光で水温を上げるため、水深20㎝・水路幅20m・延長934mの温水路を軽井沢町追分に新設。
温水路完成後、水温は約1.5℃上昇し稲作の冷害が改善された。御影用水・温水路が完成したばかりの頃は森林や畑が周囲に広がっていたが、年を追うごとに別荘地の開発が進み、現在では木立の中に数多くの別荘が建っている。

御影用水・温水路は、稲作の冷害対策のために建設されたものだが、浅間山麓の清冽な水を湛えゆったりと流れる情景は絵ハガキのように美しく、農業用水としての役割はもちろん、心を潤す場として近隣の別荘オーナーをはじめ地域の方々に愛されている。
撮影で訪れた5月下旬の御影用水・温水路は、澄み渡る青空と燃えんばかりの新緑に包まれ、言葉で形容するのがもったいないほどの美しさ。
フランスやドイツなどヨーロッパの田舎町にどことなく似ている。宿場町の風情が残る旧中山道・追分宿の近くに異国情緒豊かな風景が広がっているとは、不思議な組み合わせである。軽井沢独特の異文化の香りが漂う和洋折衷の景観だ。

また御影用水・温水路の周囲にはレストランやカフェが点在しており、散策時の昼食スポットになっている。数ある飲食店の中から今回立ち寄ったのは、お総菜・京おばんざい料理の店「四季彩」。
持ち帰り用の総菜・弁当店だが、購入した料理を店舗敷地内の緑に包まれたテラス席で食べることができる。
化学調味料や合成保存料を一切使用せず、かつお節と昆布出汁をベースとした完全無添加の調理が特徴で、信頼関係で結ばれた顔の見える生産者が作った地元野菜、築地にて料理人が直接仕入れた海鮮類など、厳選された食材の旨味を引き出したメニューが、食にこだわる軽井沢人に好評だ。

ヨーロッパ的な御影用水・温水路周辺を散歩した後で味わう和のお総菜。そんな和洋折衷の軽井沢らしい?組み合わせを楽しみたくて、店舗のショーケースに陳列された数ある総菜の中から「出汁巻き卵・豚の角煮・若竹煮・イカのけんちん煮」を選び、ウッドデッキのテーブルでランチタイム。清々しい緑風が自然志向の総菜の優しい味覚をさらに引き立ててくれる。
浅間山を背に、ヨーロッパの田舎町的な風景が広がる御影用水・温水路。旧軽井沢に代表される伝統的な別荘地とは一線を画す牧歌的な景色を、近隣に点在するレストラン&カフェに立ち寄りながら、ぜひ、満喫していただきたい。
