軽井沢エリアの情報は数あれど、
何となくどれも似ていて新鮮味がないような…。
そんな印象をお持ちの皆様へ、ちょっとレアなレポートをお届けします。
紹介スポットは、軽井沢を拠点に“見る・味わう・楽しむ”をテーマに、佐久・小諸・追分・草津方面など広範囲からセレクト。
地域に根ざしたおすすめスポットを紹介します。
Vol.1
米づくりから酒造りまで“Made in SAKU のSAKE”
軽井沢エリアにはワイナリーやブルワリーがあり洋酒のイメージが強いが、お隣の佐久は酒蔵が13ヶ所もある酒所。全国新酒鑑評会で高評価を得ている酒蔵が目白押しなのだ。佐久には、美味しい日本酒を生み出す三拍子“水・米・気候”が揃っているらしい。
良質な軟水で知られる八ヶ岳水系の伏流水を汲み上げた仕込み水。地元佐久盆地で生産される酒造好適米「美山錦」。酒造りに適した厳寒な気候…。仕込み、醸造の冬を越え、新酒の産声があがる春の酒蔵を訪ねてみた。

歴史を感じさせる土屋酒造店の母屋と酒蔵
自然環境そのものが酒蔵とも言える佐久市内に林立する酒蔵の中から今回スポットを当てたのは、清酒“ 亀の海” の醸造元である土屋酒造店。創業100年を超える老舗で、市販吟醸酒を長野県下で先駆けて発売し、以来一度も途切れることなく吟醸造りを継承する高品質酒造に注力する酒蔵だ。
全国新酒鑑評会金賞10回(長野県首席1回)、関東信越国税局最優秀賞1回・優秀賞25回(長野県首席1回)に輝くなど華々しい受賞歴を持つ。

ショールーム内には、鑑評会の賞状やカップ、明治時代の写真などが展示されている
仕込み蔵・貯蔵蔵・壜詰め場、すべてが歴史の刻まれた木造の建物内にあり、蔵内空調設備、連続式蒸米装置、自動製麹装置などの合理化のための設備投資は一切行っていない。機械化の波が押し寄せても、時代に迎合することなく信州佐久の気候を活かした酒造りを貫いている。
吟醸酒の洗米は一粒一粒の米に水分を均等に与えるため10kgずつ手作業で行うなど、労を惜しまぬ昔ながらの手造りを細部に至るまで徹底している。

店内に展示されていた写真パネルには、手造りを貫く妥協を許さぬ職人魂が宿っている
なかでも注目したいのが、有機農法の酒米にこだわった特別純米「茜(あかね)さす」(限定品)。酒米を栽培する田まで特定しており、なんとその場所は、滅多に市場に流通しない幻の米の産地「信州浅科村五郎兵衛新田」。魚沼産コシヒカリを凌ぐとも言われる佐久のブランド米“五郎兵衛米”の生産者と共に有機農法による酒米(ひとごこち・美山錦)づくりに取り組んでいるという。
五郎兵衛新田は、エステの泥パックを思わせる粒子の細かい粘土質の田んぼで、美味しいお米を生み出す条件を高レベルで満たす土地。幻の米を生み出す田んぼで育てた酒米で醸す日本酒が味わえるとは、なんて贅沢なのだろう。

五郎兵衛新田の農薬無散布米で仕込んだ「純米大吟醸 茜さす」。佐久酒の会の新酒発表会で会員に手渡される
また土屋酒造店では、日本酒ファンが米づくりと蔵開きを体験できる『佐久 酒の会』を主催しており、会員は、五郎兵衛新田での田植え・稲刈りの体験会と新酒発表会に参加できる。平成12年に発足し、平成27年3月現在の会員数は約170名。会員の中には軽井沢の別荘オーナーもたくさんいるとのこと。
信州佐久の自然の中で酒米を育て、実りの喜びを分かち合い、収穫した米で酒を醸し、新酒を楽しむ。地産地消の極みとも言える『佐久 酒の会』の活動に興味津々である。

五郎兵衛新田で行われる「佐久酒の会」の活動<写真提供:土屋酒造店>
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